「絵本の力を借りて、たくさん愛の言葉を掛けてあげて」
と話す松本直美さん
西日本新聞

西日本新聞
2008年1月30日

私の子育て講座
「読んでもらった」幸福感を
豊かな感性、絵本ではぐくめ

 「みんなは、このちびゴリラが、だーいすきでした…」

 福岡市のビル一室。絵本「ちびゴリラのちびちび」のページをめくりながら、ゆっくり読み進めていく。耳を澄ますのは子どもではなく母親ら約三十人。絵本の読み聞かせの必要性を、親や教諭らに説いて三年になる。

 小児歯科の衛生士をしていたが、出産を機に転職。十年前に再就職した先が、福岡市の児童書販売会社だった。営業担当として絵本の良さを学ぶうちにのめり込み、「絵本で子育て」センター ( 本部・兵庫県芦屋市 ) 設立にかかわった。会社勤めをしながらの活動だ。

 勧めるのは、大勢の子どもを集めた「読み聞かせ会」ではなく、親や祖父母が子や孫に一対一で読む方法。子どもに合わせてゆっくり読めるし、問い掛けにも答えられる。何より、子どもは「自分のために読んでくれている」と思うことで愛されている実感を得られるからだ。
  例えば絵本「ちびゴリラ−」では、森の仲間の、ゴリラに対する「だーいすき」という言葉が繰り返し登場する。親の優しい声でそうささやくだけで、子どもたちは幸せな気持ちになるという。  「子どもが大きくなるに連れて、親は『後でね』『早くしなさい』といったあしらいや命令の言葉が多くなる。絵本の力を借りて、たくさん愛の言葉を掛けてあげて」

 ある母親から、こんな話も聞いた。二十歳になった息子が最近になって、中学時代にいじめを苦に死のうとしたと告白した。息子は踏みとどまった理由について、こう振り返ったという。「家の本棚の絵本を一冊一冊手に取って見ていたら、小さいころ、母さんにいっぱい読んでもらったことを思い出した。そしたら死にきれんかった」
 虫を捕ったら死ぬ。花を摘んだらしおれる。当たり前のことを知らないまま育つ子が少なくない。さまざまな人との触れ合いや自然体験が必要な幼児期に、テレビ漬けにしていることや、計算や英会話を覚えさせたりする「早期教育」が遠因ではないかと訴える
  「絵本には命や友情、自然の尊さなど、人として大切な道理が詰まっている。豊かな感性を絵本ではぐくんでほしい」

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